東京高等裁判所 昭和41年(行ケ)153号 判決
一、本件に関する特許庁における手続の経緯、本願考案の要旨および本件審決理由の要点が、いずれも原告主張のとおりであることは、当事者間に争いがない。また、第一引用例および第二引用例が本願出願前国内に頒布された刊行物であり、それぞれに審決認定のとおりの記載があること、第一引用例と本願考案との一致点および相違点が審決認定のとおりであることも、原告の認めて争わないところである。
二、そして、審決認定の相違点に関し、第二引用例に、ねじ山と補助ねじ山とが互に噛み合つて反対方向に回転するようにした構成の搾油装置が示されている以上、前記一致点に徴し、本願考案は第一引用例および第二引用例の各記載に基づいて、容易に着想構成することができるものというべきである。
三、この点について、原告は、本願考案のものは第一引用例記載の搾油機に比べて特段の作用効果を奏するから登録要件を有する旨主張するが、一般に、この種の搾油装置において、ねじ棒と補助ねじ棒とを反対方向に回転させるものは、同一方向に回転させるものに比べて、その回転半径を大きくすることなく、ねじ棒のねじ溝巾を比較的広くしてもねじ山の斜面と補助ねじ山の斜面との間に形成される間隙を狭くすることができ、したがつて装置を簡単かつ小型化することができるのであり、このことが、通常の一般的効果にすぎないことは、当事者間に争いのないところである。このように、ねじ棒と補助ねじ棒とを反対方向に回転させるものは、ねじ溝巾が比較的広いにもかかわらず、ねじ山の斜面と補助ねじ山の斜面との間に形成される間隙を狭くすることができ、装置が簡単かつ小型化される以上、両者が等しく同一方向に回転するものに比し、搾油、搾汁がより効果的に行なわれ、濾過液等がより有効に取り出されることも、構成上当然のことといわねばならない。したがつて、原告の主張する特段の効果なるものは、すべて本願考案の前記構成に由来する一般的な作用効果であるにすぎず、予測可能の範囲を超えるものではないといわざるをえないから、このような効果を奏することを根拠として本願考案の登録要件を肯認することはできない。
四、以上のとおり、本願考案の登録を拒絶すべきものとした本件審決に原告主張のような違法はないから、その取消を求める原告の本訴請求は失当として棄却する。
〔編註その一〕 本願考案の要旨および審決理由の要点は左のとおりである。
本願考案の要旨
円筒の側面部分を縦に切除した円弧筒状の圧搾外筒1内にねじ棒2を装入し、圧搾外筒1の側面における弦面空間より外筒外に露出したねじ山3のねじ溝6部分にねじ山3とねじの回転方向を反対にした補助ねじ棒7の補助ねじ山8部分を挿入するようにねじ山3と補助ねじ山8とを互に嵌合して並列しねじ山3の斜面と補助ねじ山8の斜面との間に搾出用間隙を形成しおよび外筒1の円弧縁14部分もしくは外筒円弧縁補助板13刃先部分と補助ねじ山8の外周面部分との間に搾出用間隙を形成しねじ棒2と補助ねじ棒7とを互に反対方向に回転できるようにしてなる開放円筒型双翼連続圧搾機の構造(別紙図面参照)。
本件審決理由の要点
本願考案の要旨は前項記載のとおりである。ところで、本願出願前国内に頒布された刊行物である特公昭二八―四九九四号公報(以下「第一引用例」という。)には、円筒の側面部分を縦に切除した円弧筒状の圧搾外筒1内にねじ棒2を挿入し圧搾外筒1の側面における弦面空間より外筒外に露出したねじ山3のねじ溝6部分にねじ山3と回転方向を同じくした補助ねじ棒7の補助ねじ山8部分を挿入するようにねじ山3と補助ねじ山8とを互に嵌合して並列し、ねじ山3の斜面と補助ねじ山8の斜面との間に搾出用間隙を形成し、外筒1の円弧縁14部分もしくは外筒円弧縁補助板13刃先部分と補助ねじ山8の外周部分との間に搾出用間隙を形成し、ねじ棒2と補助ねじ棒7とを互に同一方向に回転できるようにした開放円筒型双翼連続搾油機が記載されており、また、同じく本願出願前国内に頒布された特公昭二九―三四八三号公報(以下「第二引用例」という。)には、ねじ山と補助ねじ山とが互に噛み合つて反対方向に回転するようにして原料を送り込むようにした搾油機が記載されている。
そこで、本願考案と第一引用例記載のものとを対比すると、両者は、ねじ山の一部を円弧筒型外筒側面における弦面空間より外部に露出せしめ、外部に開放したねじ溝にそのねじ山と噛み合う補助ねじ山を挿入するように互に嵌合し、並列するねじ棒の一方のねじ山の斜面と相手ねじ山の斜面との間に濾過用搾出用等の間隙を形成し、圧搾外筒側面における弦面空間を経て濾過液、搾汁、搾油等を取出すようにした点で同一であり、ただ原料を送り込む互に噛み合うねじ山の回転方向が相違しているにすぎない。しかし、この相違点についてみると、第二引用例に示されているように、原料を送り込む互に噛み合うねじ山が反対方向に回転するようにすることは、搾油機において普通のことである。
したがつて、本願考案は、第一引用例および第二引用例記載のものから当業者が格別工夫を要しないで容易に考えられるものであり、旧実用新案法(大正一〇年法律第九七号)第一条の登録要件を具備しないものである。
〔編註その二〕 本件に関する図画は左のとおりである。
別紙図面
<省略>